技術力の強化

今までの石油・天然ガスの探鉱・開発事業で培われたコア技術をさらに得意技術に育てていきます。そして既存事業で現在直面している技術課題や、未来の多様化するエネルギー社会を見据えた新技術分野にチャレンジする事で、総合的な技術力の強化を図っていきます。

Core Technologies

Core Technologies:既存プロジェクトで養われたコア技術を得意技術へ

既保有の在来型油ガス田に必須のコア技術を、内外の先進技術も積極的に取り入れつつ、着実にその維持向上を図っていきます。また、イクシスLNGプロジェクトの開発や直江津LNG基地の操業経験を通して獲得したLNG関連技術と、国内外の油ガス田開発で培ったタイト貯留層開発技術を競争力のある得意技術へ育てていきます。

Core Technologies : セラミック膜による随伴水処理

油と共に生産される「油田随伴水」は年々増加し、その処理が大きな課題となっており、より経済的かつ水資源としての有効利用を可能にする高度な水処理技術が求められています。

当社は、2015年度~2017年度にかけて、JOGMEC技術ソリューションPhase2(国内実証)事業として、千代田化工建設(株)並びにメタウォーター(株)と共同でセラミック膜随伴水処理技術の実証試験を実施しました。同試験では、商業規模の大型セラミック膜(径180mm×長さ1.5m)を用いた実証プラントを秋田県八橋油田に建設し、約7ヶ月の実証試験により本技術を商業技術として確立しました。本業績により一般財団法人エンジニアリング協会より平成30年度「エンジニアリング奨励特別賞」を授与されています。

実証プラント(秋田)とセラミック膜(左)
膜処理原水(下)と処理水(上)
携帯型試験機

また、2018年度から3ヶ年の計画で、JOGMECとの共同研究として「事後調査研究」を開始し、引き続き秋田実証プラントを用いた試験データの収集・オペレーションの最適化等を図っています。

技術開発と並行して、本技術の操業現場への適用に向け、国内外油田操業会社他に対し技術の紹介と協議を行っています。この一環として、2018年度にはJOGMECから「産油国等におけるセラミック膜随伴水処理技術の適用性調査」を受託して、北米を中心とした調査を行うと共に、携帯型試験機を製作し複数の油田随伴水の試験を実施しています。

Core Technologies : アスファルテン制御

技研におけるアスファルテン対策の取組

原油中に安定的に分散しているアスファルテンは温度や圧力の低下、油組成の変化により析出し、生産操業上の大きな問題となっています。写真/図①~③に示す様に、この問題は石油開発のあらゆる場面で発生しています。技術研究所貯留層評価グループでは、アスファルテンの析出・凝集の抑制条件を検討して現場の操業条件に反映したり、効果的なインヒビター評価手法を構築しています。 また新たな取組として、溶解度指標や分子構造解析、デジタル技術の適用を通じてアスファルテンをミクロからマクロの連続的視点でその現象を捉える事を目指しています。

①チュービング内での析出
②油層内での析出
孔隙の閉塞
③地上施設での析出

Core Technologies : 水銀

原油・天然ガス中には、産地によっては微量の水銀が含まれている場合があり、水銀が石油産業の上下流において種々の問題を引き起こすことが知られています。また水銀は人体に対し有害であり、人の健康や環境に対するリスクの大きい物質でもあります。原油・天然ガス中に水銀が天然の不純物として含まれる場合には、生産プロセスにおいて水銀を適切に除去した上で、安全な生産物として流通・販売を行っています。また、除去した水銀等についても環境・安全に配慮した適切な管理が行われています。しかしながら生産プロセス中における水銀の挙動やその化学形態には依然不明な点も多く残されています。技術研究所環境・化学グループでは、各プロジェクトの水銀管理への貢献を目的に、生産プロセス中における水銀挙動と存在形態の解明、及び水銀分配モデルの構築とシミュレーターへの実装等包括的な取組を実施しています。

図. 水銀の化学形態と生産流体中での存在形態
図. 生産施設プロセス例と水銀関連研究課題相関図

Core Technologies : 腐食・防食技術

技術研究所金属材料グループでは、石油・天然ガスの掘削・生産に使用される金属材料を主な研究対象としており、材料選定、防食技術の開発、腐食事象に関する分野の調査を行う事で、石油の探鉱・開発・生産の各段階で安定した操業に寄与しています。

石油・天然ガスの生産を支える
腐食・防食技術

探鉱/開発/生産フェーズと技術分野の変化

Core Technologies : 低浸透性貯留層開発

フラクチャリング技術

当社はこれまで国内外の油ガス田開発を通じて、低浸透性貯留層開発に必須とされるフラクチャリング技術を培ってきました。最適なフラクチャリングデザインを作成し、坑井あたりの生産量を最大化するためには、地下で伸展するフラクチャー形状を精度良く把握することが重要であり、当社ではジオメカニクスモデル構築を通じた応力変化予測やマイクロサイスミック等のモニタリング技術の獲得に力を入れています。今後もこれらの技術を活用し、当社が保有するアセットにおける開発計画の最適化を進めて参ります。

図1. 多段階フラクチャリングのイメージ図
図2. フラクチャリングによって生じた地層応力変化のシミュレーション例

Core Technologies : LNG(設計・建設から操業まで)

LNGTFでは、イクシスLNG生産プラント、LNG運搬船、直江津LNG受入れ基地等の建設、操業経験に基づき、上流から中下流に至るまでのLNGサプライチェーンにおける技術の蓄積及び展開を行っています。主な活動内容は以下4点です:

  1. 1.イクシスLNGプロジェクトにおけるプロジェクト立上げ、設計、建設、操業の経験を計画中のアバディLNGプロジェクトに反映
  2. 2.LNGバンカリング等のLNG需要創出を行うための技術獲得
  3. 3.プロジェクトへの派遣を通じた人材育成
  4. 4.イクシスで得られた教訓を活用した技術標準書の作成、教訓データベースの構築等
LNGサプライチェーン

Next Challenge

Next Challenge:今ある技術課題にチャレンジし実証の場へ、そしてコア技術へ

大水深油ガス田開発やCO2 EORによる回収率向上といった上流の技術課題に引き続き取り組み、これらを当社のコア技術に育てていきます。また洋上風力発電などの再生可能エネルギーやCCS1及びCCU2も新たな課題とし、これらをコア技術にすべく取り組んでいきます。

CCS1(Carbon Dioxide Capture and Storage):二酸化炭素の分離回収・貯留

CCU2(Carbon Dioxide Capture and Utilization):二酸化炭素の回収・利用

Next Challenge : 大水深油ガス田開発

大水深油ガス田開発TFでは、当社がオペレーターとして大水深油ガス田開発を担うことを目的として、大水深技術の獲得・蓄積に取り組んでいます。主な活動は以下3点となります:

  1. 1.イクシス・アバディに加え他大水深開発技術の獲得・蓄積、そして技術課題の抽出を実施。
  2. 2.オペレーターとしてのプロジェクト実施能力を高めるため、将来プロジェクトのコンセプトスタディを実施。
  3. 3.大水深プロジェクトへの派遣を通じた人材育成を実施。
※大水深域及び浅い海域の定義はビジョン2040を参照
海洋石油開発方式(コンセプトスタディの例)

Next Challenge : CO2EOR

炭酸ガス(CO2)の油層への圧入は、油回収量の増加効果に加えて、結果的にCO2の地下貯留に繋がる事から環境問題にも貢献できる注目すべき石油増進回収(EOR)技術です。当社は過去に国内油田で炭酸ガス圧入試験を実施した実績がありますが、多種多様な油田環境下での経験を深め、より効果的な石油の回収を実現するため、現在、海外の油田においても炭酸ガス圧入の効果実証に取り組んでいます。

一方、炭酸ガスは油よりも軽く、流れ易い(粘性が低い)流体ゆえに、油層の高浸透率部分のみに浸入してしまい、地下に大量の油が取り残されてしまう事があります。そこで当社では、この弱点を克服する技術として泡流体(フォーム)に注目しており、炭酸ガス、水を混合させ、厳しい油層環境下においても崩壊しにくい泡を形成し、地下の油を更に効率的に回収できる特殊技術の研究開発を行っています。

Next Challenge : 低炭素化技術

地球温暖化の原因とされる二酸化炭素(CO2)の排出を少なくするため、化石燃料の代わりに自然界で永続的に利用できるエネルギーとしての再生可能エネルギーの取組みを強化して行きます。当社で既に取り組んでいる太陽光発電、地熱発電に加え、洋上風力発電などに関する技術課題をコア技術として発展させます。
また、排出したCO2を分離回収した後に、それを貯留、あるいは有効利用するCCS1及びCCU2技術も新たな課題とし、これらをコア技術にすべく取り組んでいきます。平成28年度から二酸化炭素地中貯留技術研究組合に参画し、大規模CO2圧入・貯留の安全管理技術の開発・実証に取り組んでいます。また、CO2-EORを含むCCSの国際基準(ISO/TC265)策定活動に積極的に貢献すると共に、日本CCS調査(株)の株主として日本国内における実証プロジェクトに参加しています。

CCS1(Carbon Dioxide Capture and Storage):二酸化炭素の分離回収・貯留

CCU2(Carbon Dioxide Capture and Utilization):二酸化炭素の回収・利用

当社では、CCS作業時に地下に貯留されたCO2が、地中のどの部分にどの程度分布しているかをモニタリングするために、光ファイバーケーブルを使用する最新の地震探査技術の実証試験を行っています。
直径1.8mmのチューブに収められた光ファイバーケーブルを坑井Aの坑内へ降下させ、地表からの人工地震波を用いてVSP(Vertical Seismic Profile)を実施し、この最新技術の有効性を検証し、CCSモニタリングへの適用可能性について検討しているところです。

Emerging

Emerging:未来を見据えた技術

エネルギー社会の将来に必要な未来の技術に取り組んでいきます。国内エネルギー資源として大きな埋蔵量を有する水溶性天然ガスの更なる効率的開発、改良水攻法技術や化学攻法(ケミカルEOR)などの回収率向上技術、及び微生物を利用したEOR技術について研究していきます。加えて、更なる低炭素化に向け、CCUS1の検討を進めていきます。

CCUS1 (Carbon Dioxide Capture, Utilization and Storage):
CCS, CCUを組合せた地下に貯蔵した二酸化炭素の利用

Emerging : 炭素循環

大気中の二酸化炭素(CO2)濃度を抑えるためには、大気-陸域-海洋といった地球規模での炭素循環を理解し、大気中のCO2をコントロールしていくことが必要となります。
更なる低炭素化に向けた「炭素循環」の技術のなかでは、経済産業省及び新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が主導する「人工光合成化学プロセス技術研究組合」に参加し、太陽エネルギーを利用して光触媒の水分解による水素の生成、並びに、生成された水素と二酸化炭素からプラスチック原料等基幹化学品の製造を目指す研究開発プロジェクトに取り組んでいます。また、NEDOから「CO2有効利用技術開発事業」を受託し、二酸化炭素からメタンを生成するメタネーションの技術開発に取り組んでいます。

Emerging : 水溶性天然ガス

当社の成東ガス田を含む、わが国最大の水溶性ガス田である南関東ガス田は、その実質的な埋蔵量は無尽蔵とされており、当社においても今後長期に渡り、天然ガスとヨウ素の両者の生産を予定しています。水溶性天然ガスタスクフォースでは、両者の生産の安定・持続的な生産と更なる拡大にむけて、千葉県内の同業他社との共同研究も含めて、より環境に優しい採取にかかる技術や生産性向上にかかる種々の検討を進めています。

成東ガス田・かん水の採収坑井
成東ガス田位置図

Emerging : Next EOR・低塩分濃度水攻法

低塩分濃度水攻法とは:
低塩濃度水攻法では地層水より塩分濃度を低くした組成の水を圧入し、多くの原油を回収する技術です。他の増進回収技術と比べ、導入コストが安く、環境負荷も低いことから近年、大きな注目を集めていますが、そのメカニズムは解明されていません。技術研究所 貯留層評価グループでは現在、そのメカニズム解明に向けた研究開発を行っています。

コア内流動実験装置

実験装置中央には原油で満たされた岩石コアサンプルが圧力容器内に封印されており、その中に塩水を圧入しているところ。

同実験装置で生産・採収された液体サンプル

岩石コアサンプルから生産された液体を等時間間隔で採収しているところ。液体量・原油量等が測定され、解析の為の基礎データとなる。

Emerging : Next EOR ・微生物メタン変換

微生物メタン変換技術とは:
技術研究所貯留層評価グループで取り組んでいる微生物メタン変換技術は、地下に取り残された原油を、地下に生息する微生物を利用してガスに変換して回収する技術です。10年以上に及ぶ研究で、国内の油田には原油をガスに変換する微生物が存在することが分かっています。液体である原油をガスに変換し地下で流れやすくすることで、より回収しやすくすることを目的としています。当研究は、産業技術総合研究所との共同研究プロジェクトであり、微生物培養のエキスパートと協力しながら、学術的にも評価の高い研究を目指しています。

図1. 微生物を含む地層水のサンプリングの様子
図2. 概念図

Digital Transformation / 技術基盤の強化

Digital Transformation(DX)

Digital Transformation:デジタル技術をあらゆる分野で最大限に活用し、エネルギー企業として効率的な開発・操業の実現とレジリエントな企業体質の構築の実現を進めていきます。技術的に大きく4つの分野に分け、以下のような取り組みを実施しています。

  • 油ガス田開発分野:地震探査データ解釈の自動化、岩相・化石種の自動判定等、作業効率の最大化を促進。
  • 掘削分野:掘削障害早期検知モデルの研究開発を行い、逸泥や抑留等による作業遅延の最小化を促進。
  • 生産・操業分野: Digital Oil FieldやDigital Twinへの取り組みを通して、操業費の全体最適化を目指す。
  • 情報管理の面では、当社の保有する膨大な技術データをクラウド上で一元管理化し、その有効活用の促進。
ダーウィンLNGプラント、越路原プラント、八橋油田等の操業・生産性改善
国内外の掘削作業の最適化
INPEX Cloudの構築

技術基盤の整備

技術基盤の更なる強化: 技術者の育成、知見・経験の創造・共有・活用、さらに技術標準といった当社技術力を支える基盤を更に強化していきます。

  • 技術者の育成・スキルマップの運用
  • ナレッジの創造/共用/活用
  • 技術標準/ガイドラインの普及・拡充
スキルマップによる若手技術者の育成
スキルマップの流れ